【内容紹介】
中尾勝憲(なかおまさのり)
1943年北九州市小倉生まれ。二つの大学で文学 と神学を学ぶ。 下関の梅光女学院、博多の西南学院を経て、小倉の西南女学院中学・高校で長年教職に携わる。 定年退職後、写真や釣りの趣味を楽しみながら、特養 ホームでの夜間勤務、学童保育などに携わる。その後、デイサービスでの講話を長年続ける。
*文芸・写真: 『島の夕陽』(小説)。 『老人ホームの人間模様』(小説)。 『釣りへのアクセルペダル』(エッセー)など、 芸術祭にて、市長賞など受賞。
*著書:
『ふと、立ちどまって』(エッセー・自宅注文可)、『破れ口に立って』(小説・ アマゾン販売)亀裂と和解・死と永遠・関係性テーマ、『老いと向き合って』(講話第一集・アマゾン販売)、その他:内村鑑三論(小冊子)
作品紹介
講話集の中で、腕の良い石工だった男性との会話を紹介していますが、彼は、「突然の脳梗塞を病んで以来、何もする気が起こらない。こんな役立たずが、ただ生きているだけですよ」と、力なく語った。
これと同じような言葉を、私は、しばしば、耳にしている。家の近くの公園で出会った男性もそうだった。 彼も、「仕事が、全てだったから、定年退職して以降、何をしていいかわからない。生きる張りがなくなった…」と、もらしていた。
私の暮らしている地域は、高齢化率が高くなっている。明るい時から、雨戸が閉まっている家も見かけられる。外に出ずに、家にこもってひっそりと暮らしているのだろう。
逆に、連れ立って散歩に出かけたり、ゲートボールを楽しんだり、談笑し合ったりしている高齢者の姿も見かける。又、現在の政治家の質の劣化ぶりに憤慨(ふんがい)する高齢婦人に出会ったこともある。
老若を問わず、『心に拠り所をもって、今の時を充実して、前向きに生きる』…きっと、こんな生き方が出来れば、素敵な人生となるでしょう。その為の一助となれば。そんな思いから、時事的な事柄をさしはさみながら、健康の面や生き方の面など、いろんな方々の実例を取り上げて具体的にわかりやすく語っている。
特に、年を重ねてからの下り坂を緩やかに歩く中での出会いには、勢いの良い若い時の上り坂では気づかなかったことが、沢山あるものですね。
思えば、老害などと揶揄(やゆ)され、社会の隅に置かれているような高齢者は、庭の隅にひそかに咲いている草花と同じようなものでしょうか。
『庭隅の草花ひとつ香る卓』
妻が、庭の隅に咲いていた見栄えのしない、ありふれた草花を摘んで、居間のテーブルの小さな花瓶に生けると、香りが漂い、寂しく侘しかった居間が、明るく豊かな空気に変った。